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浦和地方裁判所 昭和51年(ワ)919号 判決

原告

蓜島則子

ほか一名

被告

有限会社高山商店

主文

一  被告らは、原告蓜島則子に対し、各自金九五〇万三〇三九円及びこれに対する被告有限会社高山商店は昭和五二年一月一五日から、被告細野一夫は同年同月二八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告蓜島ことに対し、各自金二三六万五〇二四円及びこれに対する被告有限会社高山商店は昭和五二年一月一五日から、被告細野一夫は同年同月二八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告らの負担とし、その余は原告らの負担とする。

五  この判決の一項は、原告蓜島則子において、各被告に対しそれぞれ金二〇〇万円の担保を供するときはその被告に対し仮に執行することができる。ただし、被告らが、それぞれ金四〇〇万円の担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。

この判決の二項は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自、原告蓜島則子に対し、金五一九五万九二〇〇円、原告蓜島ことに対し、金二七六万五〇二四円及びこれらに対する被告有限会社高山商店については昭和五二年一月一五日から、被告細野一夫については同年同月二八日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの連帯負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告両名の答弁

1  原告の被告らに対する請求は、いずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

被告細野は、昭和五一年六月一六日午前一一時五分ころ大型貨物自動車(大宮一一や七〇四号)を運転して、大宮方面から川越方面に向け、所沢新道を進行中、埼玉県大宮市大字二ツ宮五五四の四先路上にさしかかつたが、その際、同所の道路わきに小型トラツクを止め、積み荷を降ろしていた訴外亡蓜島米作に追突して、同人を即死させ、原告蓜島こと所有の前記小型トラツクを破損した。

2  責任原因

(一) 被告細野は、加害車両を所有し、自己のため運行の用に供していたものであるが、前方不注視、安全運転義務違反(居眠り運転)の過失により本件事故を発生させたものであるから、自賠法三条、民法七〇九条により、亡米作及び原告らに生じた後記損害を賠償する責任がある。

(二) 被告細野は、昭和四八年一一月以降、自己所有の貨物自動車を使用して、被告有限会社高山商店の鉄材運搬業務に従事していたものであり、同社から得る収入のみで生活をたてていたものである。その運送配車は、被告会社においてなし、積込みも被告会社で行なつており、被告細野は、被告会社から積荷の台貫の送り状を受け取り、荷送り先でこれを提出後、先方から台貫証明書をもらつて被告会社に手渡していたにすぎず、帳簿等はなく、単に被告会社備付けの帳面に月日、行先、送り先、検収トン数を控えてもらつていたにすぎないのであつて、運送業者としての主体性独立性はなかつた。又、被告細野の所有車両は、常時被告会社内に駐車してあり、その維持管理費用は、月一回の運賃支払時に差引かれていたから被告会社がこれを管理していたものである。

右事情を総合すると、被告細野と被告会社は、実質的には使用者被用者の関係にあり、被告会社は、本件加害車両の運行供用者であるから、被告会社は、自社の製品の運搬中に被告細野が前記過失により発生させた本件事故により亡米作及び原告らが被つた後記損害を、民法七一五条、自賠法三条により賠償する責任がある。

3  損害

(一) 逸失利益 金七〇四五万九二〇〇円

亡米作は、本件事故当時二九歳(昭和二二年一月八日生)の男子であり、青果商「八百茂」の実質的経営者として、同店から毎月三〇万円の給料及び年二回の賞与として各二ケ月分の金員をえていたものである。

亡米作は、本件事故がなければ、右年間収入金四八〇万円から生活費(三割)を控除した金三三六万円の実収入を、満六七歳に至るまでの三八年間取得しえたものであるから、この逸失利益の現価をホフマン方式により年五分の割合による中間利息を控除して(係数二〇・九七〇)算出すると、金七〇四五万九二〇〇円となる。

(二) 慰藉料 金八〇〇万円

亡米作は、「八百茂」を実質上支えてきたものであり、一家の柱であるから、本件事故により被つた精神的苦痛を慰藉するには金八〇〇万円をもつて相当とする。

(三) 相続

原告蓜島則子は、亡米作の長女であり、唯一の相続人として、右1、2の損害賠償請求権を相続により取得した。

(四) 原告蓜島ことの慰藉料 金一〇〇万円

原告蓜島ことは亡米作の母であり、同原告が本件事故により被つた精神的苦痛を慰藉するには金一〇〇万円をもつて、相当とする。

(五) 葬儀費用 墓碑建設費 金一〇〇万円

原告蓜島ことは、本件事故による亡米作の葬儀費用として、金五〇万円を下らない金員を支出し、又、墓碑建設費として金一七五万円、仏壇購入費として金六〇万七〇〇〇円を支出した。原告ことは、右費用の内金一〇〇万円を本訴において請求する。

(六) 破損車両代 金七二万〇〇二四円

本件事故により破損された原告蓜島こと所有の小型トラツクの事故当時の価格は、金七二万〇〇二四円を下らない。

(七) 代車代 金四万五〇〇〇円

右小型トラツクが使用不能となつたため、原告蓜島ことは、新車購入までの間の昭和五一年六月二三日から同年七月七日までの一五日間、一日金三〇〇〇円を支払い代車を使用した。

(八) 損害の填補

原告蓜島則子は、本件事故に関し、自賠責保険から金一五〇〇万円を受領し、被告細野から損害賠償金一一五〇万円の弁済を受けたので、残債権は金五一九五万九二〇〇円である。

4  よつて、被告ら各自に対し、原告蓜島則子は、損害賠償金五一九五万九二〇〇円、原告蓜島ことは、損害賠償金二七六万五〇二四円、並びにこれらに対する本訴状送達の日の翌日から各支払済みまで民訴法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する被告らの答弁

1  請求原因1の事実は、原告ら主張の日時場所において本件事故が発生し、亡米作が死亡したことは認め、その余の事実は不知。

2  同2の(一)の事実は認めるが、同2の(二)の事実は否認する。

被告会社と被告細野は、単なる運送契約上の当事者であり、両者間に使用者被用者の関係はないし、被告会社が本件加害自動車を運行の用に供したこともない。

又、本件事故は、鉄材を運搬した帰途に発生したものであり、被告会社の運行支配外において発生したものである。

3  同3の事実中、(三)の内相続関係及び(八)のうちの弁済関係事実は認め、その余は争う。

第三証拠〔略〕

理由

一  被告細野が、昭和五一年六月一六日午前一一時五分ころ、自己所有の本件加害車両を運転中、前方不注視、安全運転義務違反(居眠り運転)の過失により、埼玉県大宮市大字二ツ宮五五四の四先路上において、同所に駐車中の小型トラツクから積み荷を降ろしていた訴外亡蓜島米作に追突して、同人を即死させたことは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第六号証に原告蓜島こと本人尋問の結果を総合すると、その際、原告蓜島こと所有の小型トラツクが破損したことが認められる。

二  右事実によれば、被告細野は、自賠法三条、民法七〇九条により、本件事故により亡米作及び原告らが被つた損害を賠償する責任があること明らかである。

三  次に、被告会社の責任について判断するに、成立に争いのない甲第一八、第一九、第二一、第二七、第三二ないし第三七、第四五、第八四ないし第八八、第九四、第九六号証、証人高山政一の証言により成立の認められる乙第五号証の一ないし二四、同第六号証の一ないし三、同第二一号証の一ないし一二、同第二二号証の一ないし四、証人高山政一の証言、被告細野本人尋問の結果、被告代表者本人尋問の結果を総合すると、以下の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

被告会社は、市中の工場から集めた鉄屑等をプレス加工して、販売する会社であるが、売却先への製品運搬を専門の運送店に依頼した場合には、運送賃が高くつくこともあり、又、製品の性質上、車両が汚損され敬遠されることから、運輸大臣の免許を受けないいわゆる「白トラ」業者にその運搬を依頼していたところ、昭和四八年一一月ころ、それまで「白トラ」業者として被告会社に出入りしていた訴外山口豊が手を引くこととなつたため、同訴外人と面識もあり、被告会社の近所に居住していた被告細野に対して、山口の所有する車両を買取り、同人の後を継いで被告会社の製品の運搬をするよう依頼するようになつた。そこで、被告細野は、山口から車両を買取つたうえ、更に、訴外玉藤茂を雇い入れ、同人のために被告会社から車両を一台借り受けて、無免許運送業を始めるに至つたが、両名とも、専ら被告会社の製品の運送にあたつた。もつとも、訴外玉藤は、半年後に、被告会社の専務の勧めにより、独立し、以後本件事故により無免許運送業の事実が発覚するまで、被告細野と同様に、被告会社の製品運送を業として行ない、発覚後は、正規に被告会社の従業員として、運搬業務に従事するようになつた。被告細野は、月のうち二五日前後(昭和五一年四月二一日から同年五月二〇日までの間は、二五日延べ三六回)、ほぼ毎日という位被告会社の製品の運搬にあたつたが、同被告自身の事業所なるものはなく、被告会社構内に車両を入れて、製品を積んでもらつたうえ、出発時間まで、そのまま駐車し、道路のすく夜間に同所を出発していたもので、運送先からの台貫証明書を被告会社に持ち返り、被告会社の従業員にこれを報告していたにすぎず、独自の帳簿は作成していなかつた。そして、右報告に基づく帳簿をもとに、一応毎月二〇日締めで、請求書を提出し予め決められた計算方法により算出された運送賃のうちから、被告会社において立替払いしていたガンリン代、タイヤ修理代等を差引いた金額(月額約四〇万円位)を毎月二五日受領し、これでもつて生活をしていた。本件事故当日は、被告細野は、午前一時ころ、川越市内の被告会社の営業所を出発し、早朝茨城県結城郡内で鉄材を降ろし、被告会社川越営業所へ帰る途上において、睡眠不足から居眠り運転をなし、本件事故を発生させたものである。

右事実によれば、被告会社は、契約の形式上は、被告細野に対して自社製品の運搬の注文主という関係にあるが、被告会社は、その営業上不可欠である製品の運送業務の全体を被告細野と訴外玉藤らいわゆる個人の「白トラ」業者に委ねており、かような方法をとるについては被告会社が、同社の経営上の便宜のために、積極的に被告細野や訴外玉藤に働きかけたことも一因であると認められるうえ、他方、被告細野は、営業上の施設、人員はもとより、被告会社の他には独自の顧客を持たず、専ら、被告会社の必要に応じて製品の運搬に従事しており、積荷等についての判断権などはなく、対価等の額、支払方法も被告会社がこれを定め、かつ管理していたものと認められるから、被告細野の業務は、実質的に被告会社の業務の一構成部分と認められ、同被告は被告会社の従業員の地位にあつたものといわざるをえず、又、被告会社は、本件事故当時、加害車両に対する運行支配と運行利益を有したもの、即ち、自賠法三条にいう運行供用者であつたものといわざるをえない。

よつて、被告会社は、被告細野が、被告会社の事業の執行に際し、前記過失行為により発生させた本件事故によつて亡米作及び原告らが被つた損害を民法七一五条、自賠法三条により賠償する責任がある。

なお、被告会社は、本件事故当時、被告細野は被告会社の製品運搬を終えており、被告会社の事業の執行中ではなく、運行支配も及んでいなかつた旨主張するが、前記認定のとおり、被告細野は、荷を降ろした後被告会社へ帰る途上にあつたのであるから、被告会社の業務の執行中でなく、同社の運行支配が及んでいなかつたなどということはできない。

四  損害

1  亡米作の逸失利益

(一)  成立に争いのない甲第六六号証、原告蓜島こと本人尋問の結果によると、亡米作は、昭和二二年一月八日生まれの男子であり、本件事故当時満二九歳であつたこと、同人は、二〇歳ころから死亡時まで、母親の原告蓜島ことが営業名義人である青果業「八百茂」を、同原告、実弟健と共に家族三名で経営してきたこと、当時亡米作は、離婚した妻との間に生まれた原告蓜島則子を、原告蓜島ことと共に、扶養していたこと、以上が認められる。

(二)  原告らは、亡米作は、昭和五一年一月以降毎月金三〇万円の給料を原告蓜島ことから支給されており、その他賞与として年二回合計金一二〇万円を支給されることになつていた旨主張するところ、証人蓜島健の証言(一、二回)、原告蓜島こと本人尋問の結果中には、右に符合する供述部分があり、証人蓜島健の証言(二回)により税理士出浦賢一が作成したと認められる原告蓜島ことの昭和五一年分の所得税確定申告書(青色申告)及びその計算書類等である甲第九八、第九九号証の各一、二(官署作成部分の成立は争いがない)、同第一〇二号証の一ないし三、同第一〇三号証には、亡米作に対して、昭和五一年一月から六月までの間毎月金三〇万円づつ合計金一八〇万円の給料が支払われた旨の記載がある。

しかしながら、右所得税確定申告書によれば、昭和五一年度の「八百茂」の売上高から売上原価を差引いた額は、金九九六万六〇一一円、公租公課、水道光熱費等の経費(亡米作他一名に支払つたとする給与金二〇六万円は除く)の合計は金三〇四万八八一〇円であるから、原告蓜島こと、亡米作、訴外蓜島健の三名において分配可能な金額は金六九一万七二〇一円となるところ、専従者控除として、蓜島健に対して給付すべき額として金二四〇万円を計上しているから、(原告蓜島こと本人尋問の結果、証人蓜島健の証言(一、二回)によれば、現実に、右に相当する金員を訴外健に支給していたという)、これを控除した金四五一万七二〇一円をもつてしては、亡米作に対して、主張の如き合計金四八〇万円の給与・賞与を支給することはできず、営業名義人である原告蓜島ことは右営業による収入を全く得られないこととなる。かようなことは、到底考えられないのであり、右所得税確定申告書が、本件事故後に作成されたことを考慮すると、その信用性には疑問があり、原告ら主張事実を認めるに足る証拠とはなしえず、右と同一内容を述べていることに帰する前記蓜島健の証言、原告蓜島こと本人尋問の結果も措信しえず、他に原告主張事実を認めるに足る証拠はない。

かえつて、前記蓜島健の証言、原告蓜島こと本人尋問の結果によれば、亡米作は、当時は、寝起きこそ、原告蓜島ことが買受けた建物でしていたが、食事等は、原告蓜島則子と共に、原告蓜島ことの家(八百茂の店舗)でしており、亡米作は、その実弟健と共に、原告蓜島ことと同一の生計を営んでいたこと、「八百茂」の営業による金銭は、原告蓜島ことがこれを管理し、給料名目により、月々亡米作、健に対して一定額が支給されるようなことはなかつたこと(なお、亡米作が、原告蓜島ことから、居住していた建物のローンの支払いのため、金員を預かることがあつたとしても、これをもつて、同人に対する給料支払と目することはできない。)以上が認められる。

(三)  そこで、なお検討するに、前記甲第九八、第九九号証の一、二、同第一〇二号証の一ないし三、に、証人蓜島健の証言(一、二回)及びこれにより成立の認められる甲第七一号証の一、二、同第一〇〇、第一〇一号証の各一、二(官署作成部分の成立は争いがない)、同第一〇七号証の一ないし一〇に、原告蓜島こと本人尋問の結果を総合すると、青果業「八百茂」は、株式会社大宮中央青果市場から昭和五一年度中に、合計金二一二三万四〇〇〇円相当の青果を仕入れる他、訴外有限会社三富商店、同株式会社河村屋、同高木商店等から乾物、菓子、パン、牛乳、鶏卵等を仕入れ、その他タバコの小売もしており、昭和五一年中には、金五〇六二万八六九八円の売上げがあり、その原価金四〇六六万二六八七円、経費(亡米作その他一名の給料を除く)金三〇四万八八一〇円を差引いた金六九一万七二〇一円の利益を得ていたこと、「八百茂」の最大の仕入れ先である株式会社大宮中央青果市場の仕入れは、亡米作名義でなされており、同人は営業全般について、中心的役割を果しており、その寄与率は、四〇パーセント以下ではなかつたこと、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(四)  右によれば、亡米作は、本件事故当時金二七六万六八八〇円の年間収入を取得していたから、本件事故がなければ、満六七歳に至るまでの三八年間毎年同額の年間収入を得られたものと認められるから、同人の生活費として、その四割を控除して、本件事故当時の逸失利益の現価を算出するに、本件の如く将来の稼働期間が長期に亘る場合に、中間利息控除の方式としてホフマン方式を採用するのは相当ではないから、ライプニツツ方式により年五分の割合による中間利息を控除してこれを算出すると、(係数一六・八六八)金二八〇〇万三〇三九円となる。

2  亡米作の慰藉料

前記本件事故の態様に、亡米作の「八百茂」における地位、同人の死亡により幼い原告蓜島則子が残されたこと等諸般の事情を考慮すると、本件事故による亡米作の精神的苦痛を慰藉するには、金八〇〇万円をもつて相当と認める。

3  相続並びに損害の填補

原告蓜島則子が亡米作の唯一の相続人であることは、当事者間に争いがないから、同原告は、前記1、2の亡米作の損害賠償請求権金三六〇〇万三〇三九円を相続により取得したと解すべきところ、同原告が、本件事故による損害の填補として、自賠責保険から保険金一五〇〇万円、被告細野から金一一五〇万円を受領し、これを損害の弁済に充当したことは当事者間に争いがないから、原告蓜島則子は、被告らに対して、右残金九五〇万三〇三九円の支払いを求めることができる。

4  原告蓜島ことの慰藉料

成立に争いのない甲第一五号証に原告蓜島こと本人尋問の結果によれば、息子米作の悲惨な不慮の死を目撃した原告蓜島ことの精神的苦痛は甚大であつたと認められ、これを慰藉するものとして、同原告の金一〇〇万円の請求が正当であることはいうまでもない。

5  葬儀費用、墓碑建設費等

証人蓜島健の証言(一、二回)及びこれにより成立の認められる甲第六二、第六三号証並びに弁論の全趣旨によれば、本件事故による亡米作の死亡に際し、原告蓜島ことは、墓碑建設費として金一七五万円、仏壇購入費として金六〇万七〇〇〇円を支出した他、亡米作のための葬儀費用を負担支出したことが認められるところ、右のうち金六〇万円を被告らにおいて本件事故と相当因果関係ある損害として賠償する義務があるものと認める。

6  破損車両代及び代車代

前記のとおり、本件事故により、原告蓜島こと所有の小型トラツクが破損されたが、証人蓜島健の証言(一、二回)及びこれにより成立の認められる甲第六四、第六五号証、原告蓜島こと本人尋問の結果を総合すると、右トラツクは本件事故により使用不能となつたが、その当時の価格は金七二万〇〇二四円であつたこと、原告蓜島ことは、新車購入までの間(昭和五一年六月二三日から同年七月七日まで)訴外永井春吉から代車を借用し、金四万五〇〇〇円を支払つたこと、以上が認められ、右に反する証拠はない。

7  以上によれば、原告蓜島ことは、被告らに対し、本件事故による損害金合計金二三六万五〇二四円の賠償を求める権利がある。

五  以上によれば、原告らの各請求は、被告らに対し各自、原告蓜島則子は金九五〇万三〇三九円、原告蓜島ことは金二三六万五〇二四円及びこれらに対する弁済期の経過後である本訴状送達の日の翌日(被告会社については、昭和五二年一月一五日、被告細野については、同年同月二八日)から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから正当として、認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の分担につき民訴法八九条、九二条、九三条仮執行の宣言及び同免脱宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 野田武明)

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